「始まりの木」〜目に見えないものを感じる〜

書籍

柳田國男の「遠野物語」の世界が好きで、岩手県の遠野に行ったことがあります。この「始まりの木」という小説は、「令和の遠野物語」と言われています。作者があの「神様のカルテ」の夏川草介とは、絶対良いに決まっています。

どんな話

主人公は民俗学を研究する大学の助教授古谷神寺郎と彼の弟子である大学院生藤崎千佳。彼女は、古谷の「藤崎、旅の準備をせい」と言う言葉で突然フィールドワークのお供をします。足が悪いながらも日本中を旅する古谷。彼の毒舌に辟易しながらも、それをうまくかわしつつ、必要なことを学び、感じ取っていく藤崎。この話には5カ所のフィールドワークがあります。

目に見えるもの、すぐに効果が出るものばかりが良いものとは限らないです。目に見えなくても、今は役に立たないことでも、大切なものがあるのではないかと問いかけています。

民俗学をさらに知りたくなる内容です。

名言

名言がいたるところに散りばめられているので、どれを選ぶか迷うところですが、個人的に気に入った言葉をいくつか選んでみました。

目に見えること、理屈の通ることだけが真実ではない。(古谷)

日本人にとって、森や海は恵みの宝庫であり、生活の場そのものであった。だからこそ、それらはそのままの姿 になったのだ。……巨木を敬い、巨岩を祀り、巨山を拝して、自らを世界の一部に過ぎないと考えてきた日本人の感覚は、完全に消え去ったわけではない。今もそこかしこに確かに息づいて、人の心を支えている。だからこそ……だからこそ、この国は美しいと思うのだよ。(古谷)

この国の人々にとっては、神は心を照らす灯台だった。……航路を決めるのは人間だし、船を動かすのも人間だ。何が正しくて、何が間違っているか、灯台は一言も語らない。……人はささやかな灯を見て航路を改め、再び帆を張ることになる。(古谷)

神も仏もそこら中にいるんだよ。……そんな風に目に見えないこと、理屈の通らない不思議なことは世の中にたくさんあってな。そういう不思議を感じることができると、人間がいかに小さくて無力な存在かってことがわかってくるんだ。(輪照寺住職)

もし、目に映ることが全てだと考えるようになれば世の中はとてもシンプルです。そういう世界だと、自分より力の弱いものを倒すことは、倫理に反するどころか、とても理にかなった生き方になるかもしれません。つまり勝てばいいのですから(藤崎)

名言多すぎて、全部はあげられません。それに、ここにあげたのも、省略しているので、この本を全部読まないと伝わらないことがいっぱいです。

mimi
mimi

是非全部読んでください

夏川草介すごい

作者は確か医者だったはず。医療関係の内容に詳しいのは分かるけど、民俗学に詳しいのはなぜ?と思ったら

参考文献がすごいです。これだけの本を読むのってどれだけ時間かかるのでしょう。他の人の3倍の時間を持っていますか?

やはり一冊の本を書くのには、それの10倍の研究が必要なのだと思いました。小説家すごいわ!いや、彼は医者だったっけ?

終わりに

この小説は、小説としてもすごいのですが、民俗学を知るにもとても良いと思います。

もっと民俗学を知りたいと思い、柳田國男の本を探しました。「遠野物語」以外は、全集に入っているようです。全集買うのってやや厳しいので、図書館で借りようかなと今考えています。

コメント

  1. より:

    読んでみたいです。

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